2009年9月4日金曜日

言葉を集めて つづき

・ 「デカイ」さん
「出買い」さん。意外なことに、出買いが、字引には載ってない、一般では使われてはいなかったのだろう。メモには「小売店や個人から注文を受け、商品を仕入れてくることを生業としている人。頼めば荷物を届ける宅急便のようなこともしていた」とある。
自家用車が珍しい時代、(指折り数えてみれば、つい40年前はそうだった。)頑丈な自転車の後ろにリヤカーを付けて、砂利道をガッタンゴットンと運んでいた。子供心に、重たかろうとリヤカーを皆なで押したこともある。今から思えば、迷惑なことだったのか。いつ頃、姿を消したのだろう、おそらくオートバイ(カブ、1958年)の出現、オート三輪(ミゼット、1957年)の出現の後だろう。出買いさんは「御用聞き」だった。他に「行商」のヒトもいた、魚屋さん、雑貨屋さん、みんな自転車に商品を積んでやってきていた。どうしてそう呼ぶようになったのか「ヨゴレのおじさん」は人気があった。彼が来なくなってから、かれの姓は○○だったと聞いた。
「出買い」「行商」だけではない。この二百戸、五百人程の地域で小売店を記せば、自転車屋、酒屋、電気屋、豆腐屋、百貨店のような雑貨屋、があった。うどん屋、パチンコ屋、鍛冶屋まであったと先人は言う。みんな姿を消したのと前後して、数キロ先に○○マートが出現し、それは程なく、また数キロ先の○○ストアの出現によって姿を消した。こうして、豆腐一丁を買うにも、バス(一日、数便しかない)に乗って行かざるをえぬ年寄りが出現することになった。これが近代化なるもののひとつの側面である。
先日、つれあいは、街なかに突然に出来た空き地を見て、「なにが、在ったんだっけ」と聞く。昨日まで確かに見ていた建物が、私にも思い出せない。言葉はその場かぎりに空に消えてゆくものだけれども、今の時代は、街も同じ運命にあるらしい。

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