2009年9月7日月曜日

言葉を集めて つづき

・ 「虻(アブ)は見えずに蚤(ノミ)が見える」
メモには、「矛盾したようすをあらわす。S氏より」とある。この項を書き始めた時には、「木を見て、森を見ず」の言い換え版である。と思っていたが、しだいに違うことに気づいた。「木を見て~」は、些細なことにこだわって、全体を見失っている、という意だろう。部分(木)は全体(森)に属す。ここには、矛盾はない。能力にもよろうが、森が見えればいいのだ。しかし、「虻は~」は、蚤を見る視力を持ちながら、それよりも大きな虻は見えていない、そんなこと有り得ない、矛盾している、おかしなことだ。という意なのだ。ここには、虻は見えているのに、見えないと言い張っているに違いない、という意もあるだろう。
ことわざ(諺)は、これまで「人生の知恵の表現」「処世のための教訓」である。と言われて来たが、私は、矛盾を鋭く指摘し、視覚化する役割があるのだ、と考えた。この世は、横槍、強欲、理不尽な支配、無理偏にげんこつの教え方、などなどが矛盾をまきちらしている。これら聞く耳を持たぬ矛盾の元凶に、私たちは、せめて「ことわざ」だけでもと、立ち向かってきた歴史があるのだと、思いたい。
話は変わるが、多彩な方言の使い手は、また豊かな諺の持ち主でもある(あった)。とこれを書きながら気づいた。

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