2009年12月10日木曜日

言葉を集めて つづく

・ 「ショウヤク」

やはりこれは方言なのだろうか、それももっぱら百姓の用いるところの。分厚い辞書にはない。『ほんにのうや』にもない、『方言辞典』には「処理する、整理する。」とあった。この説明では靴のうえから足を掻くような気持ちだ。具体的に書いてみよう。農作物を収穫する、土や枯れた葉や髭根はまだ付いたままだ。これを持ち帰り、「ショウヤク」しておいて、と家の者にたのむ、すると土は落とされ、不用の葉は外され、髭根はむしられるのである。つまりちょうど、八百屋の店頭に並ぶ野菜のようになる。この行為が「ショウヤク」なのである。思うにこうした、「整える」作業が廃れぬうちはこの言葉は身近からは無くならないだろう。
それはそれとして、どういう字を当てればいいのか、検索してみれば、岡山辺りでささやかに流通している言葉らしい事は解かったが、字までは解からない。「整約」「要約」「集約」「総約」「性約」「処約」と当ててみても、どれもいまひとつだ。解からないとしておこう。

ショウヤク、ショウヤクと頭の中で牛の如くに反芻していると、数学の教師が黒板に数式を書き並べ「ここまでをショウヤクすると、こうなります。つぎに~」と説明していたような気がしてきた、これは「証約」「小約」「抄約」だったのだろうか。方言の「ショウヤク」はこのイメージに近いような気がする。
それにしても、数学の記憶が言葉づかいの記憶だけだ、というのはいささか寂しい。

と、書いて半日。「嘗役」はどうかと思い至った。農作物栽培において、土と水と太陽による養い役は収穫によって終わり、後は手のみの役(約?)が始まるのである。

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